Allegro Brillante

Allegro Brillante Choreography by George Balanchine©️ The George Balanchine Trust Artists of the Philadelphia Ballet Photographer: Alexander Iziliaev Photo courtesy of Philadelphia Ballet

Allegro Brillante

音楽 / P.I.チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第3番」
振付 / ジョージ・バランシン
振付指導 / ベン・ヒューズ
バレエミストレス / 信田洋子
衣裳製作 / Costumiere

振付

バランシンのAllegro Brillante(アレグロ・ブリランテ)とは

©Tanaquil LeClercq

振付
ジョージ・バランシン
George Balanchine

1904年、ロシアのサンクトペテルブルク生まれ。20世紀で最も影響力のある振付師として広く知られる。サンクトペテルブルクの帝国バレエ学校で学び、マリインスキー劇場バレエ団で踊り、短編作品の振付を開始。24年、ヨーロッパに渡り、ディアギレフに招かれバレエ・リュスに参加。『アポロ』『放蕩息子』などの傑作を発表。リンカーン・カーステインの説得により渡米。34年、共にアメリカン・バレエ学校を設立。46年にバレエ・ソサエティを結成、後にニューヨーク・シティ・バレエへと発展。亡くなるまでバレエ・マスターを務め、バレエ団を世界で最も重要な舞台芸術機関のひとつに、そしてニューヨークの文化生活の礎に育て上げた。
60年以上にわたって425の作品を振付け、音楽はチャイコフスキーからストラヴィンスキー、ガーシュウィンまで幅広く選択。作品の多くが名作とされ、世界中のバレエ団で上演されている。

バランシンのAllegro Brillante
(アレグロ・ブリランテ)とは

ジョージ・バランシンについて


オペラ、ミュージカル、バレエと400以上の作品を残し、20世紀の最も偉大な振付家として知られるジョージ・バランシンとは。
サンクトペテルブルグに生まれ、帝室バレエ学校で学び、マリインスキー劇場で踊ると共に、ペトログラード音楽院を卒業。
プティパのクラシックバレエを学び、ディアギレフの下で多くの芸術家と仕事をし、振付家となった。 バレエ・テクニックを発展させ、ロマンティックでありながら、モダンなテイスト、スピード感、明快さ、シャープさに加え、女性の美しい動きを追求。ただ音楽とダンスだけで楽しめる作品を数多く作り、クラシックの基本を大事にしながら斬新な振付作品であるところから、「ネオクラシック」と呼ばれている。 舞台セット、衣装をシンプルにした抽象バレエ(アブストラクト・バレエ)の創始者としても有名で、物語のイメージがある作品や全幕ものバレエ「くるみ割り人形」「真夏の夜の夢」「コッペリア」など、踊りと物語の要素がある作品も多く、ミュージカル作品など多作で、ヴァラエティーに富んでいる。

東京シティ・バレエ団 芸術監督:安達悦子

Allegro Brillanteについて


ジョージ・バランシンは、「アレグロ・ブリランテ」を “13分間のクラシック・バレエのすべて “と呼んだ。
ジョージ・バランシンの最も陽気で純粋なダンス作品のひとつである「アレグロ・ブリランテ」の特徴は、この華麗な主役を演じたバレリーナ、マリア・トールチーフが「広がりのあるロシアのロマン主義」と呼ぶところである。
このバレエは、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第3番に合わせて作られている。この作品は、作曲家が第6交響曲にする予定だった曲のスケッチから生まれたものだが、代わりに1894年に死後に出版された単一楽章の作品として機能したものである。
バランシンはこのバレエを、限られた時間と空間の中で最大限の振付を展開する、拡張された古典的語彙の凝縮されたエッセイと表現している。(上演時間:16分)

『New York City Balle-NYCB』
https://www.nycballet.com/discover/ballet-repertory/allegro-brillante/
ニューヨーク・シティ・バレエ団公式WEBサイト「アレグロ・ブリランテ」解説より引用

音楽

『Allegro Brillante』の音楽

ピアノ協奏曲 第3番 変ホ長調 Op.75 第1楽章 アレグロ・ブリランテ(Allegro Brillante) P.I.チャイコフスキー

<歴史>
1893年にチャイコフスキーが作曲したピアノ協奏曲の一つ。 当初チャイコフスキーは、『人生』と銘打った交響曲を構想していたが、それを破棄してピアノ協奏曲として生まれ変わらせることにした。しかし完成以前にチャイコフスキーは死去したため、完成させることが出来た第1楽章「アレグロ・ブリランテ」のみが遺作として作品75の番号付きで出版された。

芸術監督・安達悦子が語る
-バランシン作品とその特色

芸術監督
安達悦子
Etsuko Adachi

バランシンスタイル―
「“Dance be the star of the show”バレエのストーリーよりもダンスが主役。」

一言で表すなら“The description of Balanchine is the musician who choreograph”『バランシンは振付する音楽家だ!』
バランシンが創設したSchool of American Ballet [SAB]で学び、1949年からバランシンが亡くなるまで主要なダンサーとして一緒にいたジャック・ダンボワーズの言葉です。 それまでのストーリーをバレエで語る手法ではなく、音楽をバレエで表現する、ダンサーの身体の動きを用いて音楽を視覚化することに重きをおいているのがバランシンの特色です。

父親、弟も作曲家であり、自身も学んだペトログラード音楽院で培った音楽の素養があったからこそ、バレエを「目に見える音楽」にまで突き詰めることができたのだと思います。 彼には、感性としての音楽性だけではなく、楽譜を読み解く力がありました。

かつてバランシンが言った言葉、 「“When I do a ballet I don’t think about happiness or sadness. I think about the composer and his music.” バレエを作る時、幸福や悲しみについて考えるのではなく、作曲家と彼の音楽について考える」これは、まるで指揮者や演奏家が楽譜を読み解くようなアプローチです。
バレエ・リュスで出会ったストラヴィンスキーとは親友になり、多くの作品を一緒に作っています。 また、リンカーン・カースティン(ニューヨーク・シティ・バレエ団設立・監督)にアメリカに招かれてバレエを広め、今では、アメリカのバレエといえば、バランシンスタイルといっても過言ではありません。

バランシンとの出会い―
洗練された、音楽そのもののバレエに、心が躍った。

1979年のジャクソン・コンペティションの帰りにニューヨークで研修した時、初めてバランシン作品を観ました。「コッペリア」、「アゴン」、「チャイコフスキー組曲 第3番」 は洗練されていて、音楽そのもののバレエに、心が躍ったのを覚えています。

同じ年に留学したモナコバレエ学校(Academie Danse Princesse Grace)の恩師、マリカ・ベゾブラゾヴァ先生は、若い頃、バレエ・リュスのバレエマスターとしてモナコを訪れていたバランシンに学び、彼の類まれなリズムと音楽性に影響を受けていました。 レッスンの中でも、ステップと音楽のリズムの明確な関係、音楽性を大切にされていました。
1981年のレッスン中に、バランシンが突然現れて、しばらく見学して行かれたのを覚えています。

不思議に動けてしまう・・・動かされてしまう・・・それがバランシンバレエ。
―音楽に合っていて、動きやすく躍りやすいステップだと、ダンサーが自由に、自分を解放することができる。

1982年、当時私が在籍していた松山バレエ団で「セレナーデ」「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」を踊りました。「セレナーデ」は大好きなチャイコフスキーの弦楽セレナーデの曲に振り付けられたロマンチックな作品です。 この時はワルツガールを、その数年後、ユニバーサル・バレエでワルツガールとロシアンガールを踊る機会があり、とても幸せなことでした。

ニューヨーク・シティ・バレエのダンサーとダブルキャストになった時は、彼女の動きのスピードとエネルギーに圧倒され、少しでも近づけるようと必死になったのを覚えています。

ダイナミックで難しいステップを、スピーディーに動き続けるのは大変でしたが、バランシンのステップは生理的に動きやすく、音楽の流れに寄り添う様にできているからか、不思議に動けてしまう・・・動かされてしまう・・・そんな気がしました。
音楽に合っていて、動きやすく躍りやすいステップだと、ダンサーが自由に、自分を解放することができるのだと実感しました。

『トリプル・ビル2023』に「Allegro Brillante」を選んだ理由-
バランシン作品の中で当団が最初に上演する作品に相応しい!

「Allegro Brillante」は、松山バレエ団で「セレナーデ」と一緒に上演していたのを見て、ワクワクしました。
また、ニューヨークで見たニューヨーク・シティ・バレエ団の舞台は、強靭なテクニックで、スピーディーに音楽と一体になった踊りに高揚感を覚えました。
チャイコフスキーのピアノ協奏曲第3番の輝かしく華やかな曲も魅力的です。

指導のベン・ヒューズ氏は以下のように話しています。
「チャイコフスキーの音楽を使っており、とてもエクサイティングでクラシカルです。簡単ではないけれど素晴らしいバレエです。バランシンはよく「14分の中にクラシックバレエの全てが詰まっている」と言っていました。」
彼の言葉に、数あるバランシン作品の中で当団が最初に上演する作品に相応しい!と確信しました。

舞台で踊るダンサーに期待するもの-
“interpret”バレエを解釈する―エキスパートから学び、真髄をしっかり受け取ること。

バランシンスタイルは、クラシックバレエのテクニックを更に進め、スピード、軽快さ、そして強靭さが求められます。作品を解釈して忠実に指導してくださるエキスパートである 指導者から学び、真髄をしっかり受け取ることが、解釈することになると思っています。 ウヴェ・ショルツもSAB(School of American Ballet) に留学して、学んだバランシンスタイルのバレエが、後に、彼の創作に影響があったと聞きます。
そして、音楽を聴く力、音楽に寄り添って踊ることが可能になるテクニックを身に付けて、ダンサーとして大きく成長して欲しいと思っています。

振付指導のベン・ヒューズ氏―
バランシンスタイルの真髄

ベン氏は、1985年ローザンヌで受賞してSABに留学、ニューヨーク・シティ・バレエ団に入団していらっしゃいます。ローザンヌの前は、アントワープのバレエ学校でワガノワ・スタイルの教育を受けています。SABに入った当初は、バランシンの作品は速く動けなければ踊れないから、そのテンポに慣れるのは決して容易ではなかったそうです。

2022年5月に、日本バレエ団連盟のマスタークラスでクラスレッスンを教えて頂きました。バランシンスタイルのクラスをわかりやすく教えてくださった時、的確に、厳しく指導されるのを目の当たりにしました。
ダンサーとしての輝かしいキャリア、そして世界中で指導していらした素晴らしい実績をもとに、東京シティ・バレエ団のダンサーにも、バランシンスタイルの真髄を教えてくださると思います。

振付指導:ベン・ヒューズ氏からの
メッセージ

ベン・ヒューズ
Ben Huys


ベルギー、ヘント生まれ。アントワープ市営のバレエ学校でヨス・ブラバンツ氏に師事。 1985年ローザンヌ国際バレエコンクールで優勝し、ニューヨーク・シティ・バレエの公式バレエ学校であるスクール・オブ・アメリカン・バレエへスカラシップを得て入学。 プリンシパルとして、ジョージ・バランシン、ジェローム・ロビンスらの作品に出演。ピーター・マーティン演出の「眠れる森の美女」でデジレ王子をオリジナルキャストとして踊る。 現在、ジョージ・バランシン・トラストやジェローム・ロビンス・ライツ・トラストの指導者として活動している。

It’s been a real pleasure staging Allegro Brillante for Tokyo City Ballet. It has been a really long time since this ballet was performed in Japan and I’m thrilled that the Japanese audience will get to see this exciting ballet again.
Balanchine once said ” it contains everything I know about classical ballet”.
It is technically extremely difficult and can be a real challenge for the dancers.
The rehearsals have been hard but I am pleased to see how the dancers have committed themselves fully to this piece and how they have improved and become stronger dancers. The work in progress have been a joy and I’m looking forward to see the result on stage.
It is also exciting that Tokyo City ballet is now adding a work by George Balanchine to their repertoire.

東京シティ・バレエ団で『アレグロ・ブリランテ』を上演できるのは、本当に嬉しいことです。このバレエが日本で上演されるのは本当に久しぶりなので、 日本のお客様にこのエキサイティングなバレエを再び見ていただけることに感激しています。
バランシンは、「この作品には、私が知っているクラシック・バレエのすべてが詰まっている」と語っています。
技術的にも非常に難しく、ダンサーにとっては本当にチャレンジとなる作品です。
リハーサルは大変でしたが、ダンサーたちがこの作品に全力を尽くし、より強いダンサーに成長した姿を見ることができ、嬉しく思っています。
作品が良くなって行くことに喜びを感じていて、舞台でその成果を見るのが楽しみです。
また、東京シティ・バレエ団がジョージ・バランシンの作品をレパートリーに加えることは、とてもエキサイティングなことです。