<PROFILE>
イタリア生まれ。ローマ国立アカデミー卒業後、ローマ歌劇場、ニースオペラ劇場で踊り、1997年ドレスデン・バレエ団入団。ライプツィヒ・バレエ団移籍後、同団芸術監督ウヴェ・ショルツによりプリンシパルに抜擢。2003年、彼のために振り付けられたストラヴィンスキー「春の祭典」ピアノ版ソロを踊る。08年にカンヌで行われたパレ・デ・フェスティバルにて「レ・エトワール・デュ・バレエ 2000」を受賞。その後、世界中のガラ公演にゲストダンサーとして招聘される傍ら、振付家より指導を一任され世界中で多くの作品の再演に携わっている。
オーケストラを例に。
『Octet』で用いられる楽器は8挺だけです。
バイオリン4挺、ビオラ2挺、チェロ2挺ですね。
指揮者の視点で考えると、80人くらいの演奏家が『ベートーヴェン交響曲第7番』を演奏する一方、メンデルスゾーンではわずか8人です。
これはバレエにおける重さの違いでもあり、ウヴェ・ショルツの天才的、驚異的な点とは、まさにそこで、演奏の質の高さは同じでなければなりません。どちらの作品でも、振付の質はとても重要なものになります。
ウヴェ・ショルツの振付は演奏家とダンサーの質を表現している、と言えるでしょう。
『Octet』は喜びにあふれた作品で、メンデルスゾーンの音楽の質を表現しています。
第1、第4楽章ではコール・ド・バレエとソリストが交差して、美しい姿を見せ、第2楽章は一組の男女の関係を、第3楽章は4人の男性の間の友情を表現しています。そこにはウヴェ自身の創作、振付をする喜びも表れています。
『ベートーヴェン交響曲第7番』は代表的なものです。
振付はベートーヴェンの総譜に忠実で、バレエも4楽章から成り立ち、オーケストラの構成が反映されていて、第1楽章からゆったりした第2楽章、さらに第3楽章を経て、第4楽章のフィナーレまで、ダンサーの動きが楽器の動きに呼応しています。ソリストたちの足さばきや群舞の動きが、美しいポール・ド・ブラ(腕の動き)で彩られています。
私は、この作品はベートーヴェンの音楽と作曲家自身に対するウヴェのオマージュだと考えています。第3楽章で、すべてのダンサーが半円形になって動きを止める部分は、ベートーヴェンの魂に動きを捧げているかのようです。
東京シティ・バレエは、いつも前進することに熱心だと思います。
とてもオープンで、他人の意見を受け入れてくれるので、彼らとの仕事は、いつでも楽しく、いい雰囲気で進んでいます。
より音楽的な作品に仕上げようと努めています。
いかにダンサーが音楽をよく聴き、ダンスの中に何かしら異なるカラーを出せるようにするか、ということです。ダンサーたちには自分たちの技術を表現することにとどまらず、踊ることを楽しんでほしいと思います。
作品に見えてきているのは、踊ることの喜びと幸福感です。
単に踊るだけでなく、踊っているときの1秒1秒全てに気を配ってほしい。衣裳、全てのステップなど、あらゆる点に気を配ることで最終的には喜び、幸福感を伝えることになります。観客はそうした舞台から全力のエネルギーを受け取ることになると思います。
2016年「ダブル・ビル」インタビュー、2017年「TOKYO CITY BALLET LIVE」インタビューより抜粋
<PROFILE>
ウッチ国立バレエ学校で学び、1993年、95年のポーランドバレエコンクールに入賞し、ポーランド最優秀ダンサーとなる。ワルシャワ国立劇場、ウッチ劇場、シュツットガルト・バレエ団を経て2004年ベルリン国立バレエ団ソリスト、06年にプリンシパルとなる。主なレパートリーはM. フォーキン『レ・シルフィード』、J. クランコ『ロメオとジュリエット』『じゃじゃ馬ならし』『オネーギン』、ケネス・マクミラン『マノン』など。元ベルリン国立バレエ団 プリンシパル。
<PROFILE>
マリカ・ベゾブラゾヴァに師事し、モンテカルロ王立バレエ学校に留学。
ローザンヌ国際バレエコンクールにてプロフェッショナル賞を受賞し、フランクフルト・バレエ団に入団。その後、シュツットガルト・バレエ団に入団しソリスト契約を結ぶ。在団中、クランコ、ベジャール、ノイマイヤー、エック、キリアンなど著名な振付家の作品を数多く踊る。
1998年冬季長野オリンピックの開会式イベントにてプリンシパルとして踊る。ライプツィヒ・バレエ団へ移籍後、プリンシパルとして活躍し、現在は日本で「k2バレエ空間」を主宰している。
加藤:ダンサーが入れ替わっても、ジョヴァンニさんたちから伝えられたウヴェ作品の特色が出せるようにしたいと思っています。そのためにも、ダンサーには、基礎に徹底的にこだわって、体に叩き込み、ブラッシュアップをしてもらいたいです。
若林:初演(2017年3月)の時はジョヴァンニさんに2ヵ月間指導していただきました。今回ジョヴァンニさんには2週間指導していただきます。来日までに、初演時のクオリティまで仕上げ、そしてその上で2回目へ向けての新たな注意をいただけるよう、リハーサルを進めなければと思います。
山口:衣裳もシンプルですし、皆が同じ動きをする分、ダンサー自身の人となり、個性が際立つ。ジョヴァンニさんと規予香さんが、「機械みたいに揃わないで、皆の動きから音楽が生まれるように」とよくおっしゃっています。ダンサーそれぞれが自分なりに想像力を働かせて、表現を磨き、舞台で光ってくれることを期待しています。臆病にならずにね。
加藤:一人一人のプレゼンテーションを見せられるところまで持っていきたいですね。
音楽に合わせるんじゃなくて、音楽そのものになる。
若林:それを表現するためにも、やはりしっかり基礎が体に入っていないとってなりますよね。
そして音楽と振付のパワーに負けないダンサーの熱量がないと。
加藤:『ベト7』は何度も何度も同じメロディが出てきて、同じ振りを繰り返します。それを単調にならないで、1回目より2回目、2回目より3回目……とヒートアップしていく感じも出せたらいいなと思います。というか、自然とヒートアップしてくるのかもしれない。そういった面白さにもご注目いただきたいです。
若林:ジョヴァンニさんがおっしゃっていた「出てきた瞬間から200%の力で」。200%を出てきた瞬間から出すためには、事前に自分で相当温めておかないと、と思うんです。体もモチベーションも、全部。
加藤:プレパレーションがあってサンハイ!って始まるわけじゃなくて、わー!!って感じなのよね(笑)。いつもフルアウト。「リハーサルも毎回フルアウトしてやって」っておっしゃるので。でもそうやって真剣にやらないと筋肉もつるし、危ない。その辺も気を付けて指導しないとですね。
山口:そうね。でも、それくらいじゃないと音楽や振りに負けてしまうものね。
フェアリーズ:『ベト7』の初演では、舞台袖に倒れ込みながら入ってくるダンサーも居ましたよね。
加藤:最初はもうとにかく皆全力でやらないとってなっていたものね。しかも全楽章。私たち(&山口)も初演は心配で、袖で観ていて、地獄絵図みたいでしたよ(笑)。若いダンサーたちが袖へ入ってきて、床に手をついて肩でゼエゼエ息をしてると思ったら、またうわーって出ていくので……もう声も掛けられないくらいでしたね。
山口:そこまで追い込んで、最後に客席からいただく拍手ですからね。やっぱりそれがダンサーたちにとって何よりの喜びだと思うし、そういうダンサーの姿がきっと客席にも伝わるんでしょうね。
加藤:どんな舞台でもそうだと思うけど、極限までやりつくしたっていう感覚を、ダンサーがより深く味わえる作品なのかもしれませんね。お客様もすごく盛り上がってくださって、スタンディングオベーションでしたし。
若林:『ベト7』の初演を私は客席で観ていましたけど、あの感動はもう忘れられない!
山口:ウヴェの振付によって視覚化されたベートーヴェンとメンデルスゾーンの音楽を、ダンサーたちがいかに表現できるか……。もし一人でも感動してくださる方がいらっしゃったら、嬉しく思います。
ダンサーたちには、単に“ウヴェの振付”“ベートーヴェンの作曲”という捉え方をするのではなく、その作品の中に、2人の巨匠が生きているようなイメージを持って踊ってほしいと思っています。それをお客様に少しでも感じていただけたら、とても嬉しいです。
加藤:今回2つのウヴェ作品が並び、まさに“ウヴェ・ワールド”が展開されるわけですが、やはり作曲家が違うというところで、また違う2つの世界という見方もできると思います。今回両方出るダンサーは少ないですが、2つの世界をダンサーたちが頑張って踊り分けて、ダンサー自身も、観てくださる方も、そういった表現の違いを感じ、味わってもらえたらいいな、と思っています。
存分にウヴェ・ショルツの世界に浸ってください。回を重ねるごとにますます良いと、お客様に言っていただけるよう、指導してまいります。どうぞお楽しみくださいませ。
若林:自分がダンサーだった時のことを考えると、初演はいっぱいいっぱいで必死に創り上げるところから、2回目になると、少し余裕が出てきて表現もより膨らませられるように思うんです。ダンサーの皆も、きっとより自然に“音楽性”や“パートナリング”を表現できるようになるのではないかな、と期待しています。
私が『ベト7』初演の時に客席で味わったような感動を、さらに『Octet』も一度にご覧いただけるこのスペシャルな機会を、一人でも多くの方に味わっていただけたら嬉しいです。ご来場をお待ちしております。
八重沢美祢子バレエ教室、石井清子バレエ研究所を経て、1980年、東京シティ・バレエ団入団。87年、韓国ユニバーサルバレエ団のアジアツアーに参加。91年、勅使河原三郎+KARASの《dah-dah-sko-dah-dah》に出演。東欧などを巡る。92年、文化庁派遣芸術家在外研修員として、サン・フランシスコ、ニューヨーク、ロンドンに一年留学。当団では「コッペリア」「くるみ割り人形」「シンデレラ」「ヘンデルとグレーテル」等に数多く主演。2004年、野坂公夫、坂本信子率いるメトロポリタンバレエの一員としてスロバキア公演に参加。現在、当団ミストレス、当団付属バレエ学校教師。
神奈川県出身。岡本衣里子のもとでバレエを始める。1988年、東京シティ・バレエ団研究所入所、同バレエ団公演に参加。89年、東京シティ・バレエ団入団。以後、「白鳥の湖」三羽の白鳥、「ジゼル」パドシス、「シンデレラ」義妹役、「くるみ割り人形」雪のソリスト、スペイン、トレパック等、数多くのソリストとして参加。新国立劇場、藤原歌劇団、サイトウキネンオーケストラ、小沢征爾音楽塾等のオペラ、また、上田遥、深沢和子、ウメダヒサコ、真島恵理、廣田あつ子、各氏の振付作品に出演。2006年、文化庁海外研修員として、モナコ王立グレースバレエアカデミーにて研修。マリカ・ベゾブラソヴァ女史、ローラン・フォーゲル氏に師事。12年より「ロミオとジュリエット」乳母、13年より「ジゼル」ベルタを演じる。現在、当団団員クラス・付属バレエ学校教師。当団ミストレス。
5歳よりバレエを始める。渡辺郁子に師事。東京シティ・バレエ団研究所を経て、2000年東京シティ・バレエ団入団。「白鳥の湖」パドトロワ、三羽の白鳥、「ジゼル」ミルタ、ペザント、「コッペリア」祈り、「くるみ割り人形」スペイン、アラブ等、バレエ団公演の主要ソリストを多く務める。新国立劇場オペラ「アイーダ」の巫女の長を踊る。また、上田遙、三浦太紀、能美健志、小林洋壱等振付家の作品にも多数出演。現在、当団ミストレスとしても指導にあたる。