WIND GAMES

『WIND GAMES』(世界初演)

(C)Javier Garneche

振付
パトリック・ド・バナ
Ppatric kde bana

ハンブルグに生まれる。ハンブルク・バレエで学び、1987年ベジャール・バレエ・ローザンヌに入団、間もなくプリンシパルに。92年にスペイン国立ダンス・カンパニーに移籍。デュアト、キリアン、エックなどの作品でプリンシパルとして活躍。2003年自身のカンパニー“ナファス・ダンス・カンパニー”を設立。トルコ、オランダ、キューバ、イスラエル、オーストラリアなど世界中で活動を行う。その創作活動のフィールドは瞬く間に世界各国に広がり、マニュエル・ルグリ、アニエス・ルテステュ、オーレリ・デュポン、フリーデマン・フォーゲル、スヴェトラーナ・ザハーロワなど数々のスター・ダンサーに作品を提供。ウィーン国立バレエ、中国国立バレエ、東京バレエ団など多くのカンパニーに招聘され作品を創作している。近年の振付作品には15年、上海バレエに創作した「Exhoes of Eternity」のほか、現在ザハーロワとも新作の創作活動を行っている。また、上海ワールド・ガラの芸術監督を務めるなど、新たな活動にも積極的に取り組んでいる。2012年には「マリー・アントワネット」で、13年には「Windspiele-Windgames」でブノワ賞にノミネートされた。

http://patrickdebana.com/

『WIND GAMES』の音楽

ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35は、P.チャイコフスキーが1878年に作曲したヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲。ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームスのいわゆる三大ヴァイオリン協奏曲に加えて「四大ヴァイオリン協奏曲」と称されることもある。着想はスペイン交響曲と言われている。

<構成>

第1楽章:アレグロ・モデラート − モデラート・アッサイ ニ長調
第2楽章:カンツォネッタ アンダンテ ト短調
第3楽章:アレグロ・ヴィヴァチッシモ ニ長調

(C)Yuji Hori

ヴァイオリン独奏
三浦文彰
Fumiaki Miura

<PROFILE>

2009年世界最難関とも言われるハノーファー国際コンクールにおいて、史上最年少の16歳で優勝。これまでロサンゼルス・フィル、ロイヤル・フィル、マリインスキー劇場管、チャイコフスキーシンフォニーオーケストラ、ベルリン・ドイツ響、NDRエルプ・フィル、フランクフルト放送響、シュトゥットガルト放送響、ケルン放送響、エーテボリ響などと共演。共演した指揮者にドゥダメル、ゲルギエフ、フェドセーエフ、ズーカーマン、ロウヴァリ、ティチアーティ、オロスコ=エストラーダなどが挙げられる。NHK大河ドラマ「真田丸」テーマ音楽を演奏したことや、TBS「情熱大陸」への出演も大きな話題となった。18年からスタートしたサントリーホールARKクラシックスではアーティスティック・リーダーに就任。21年はバルセロナ響、ウィーン室内管と共演。ピリスとのデュオリサイタルも行う。ロンドンの名門ロイヤル・フィルのアーティ スト・イン・レジデンスにも就任。CDはエイベックス・クラシックスよりリリース。09年度第20回出光音楽賞受賞。使用ヴァイオリンは、宗次コレクションより貸与されたストラディヴァリウス 1704年製作 "Viotti"。

舞台『WIND GAMES』の魅力を紐解く

◎世界初演となる本作品は、新進気鋭の振付家パトリック・ド・バナ氏の手によるものである。今回、バレエマスターとして直にその振付を目のあたりにした中弥智博氏に『WIND GAMES』の魅力と舞台が出来上がる様子を熱く解説して頂いた。

【テーマ1】パトリック・ド・バナ氏と『WIND GAMES』の世界観

質問1)最初に、パトリック・ド・バナ氏の印象をお聞かせください。

彼はとても人を惹きつける事の出来る振付家、あるいは人間であると思います。
彼から話される言葉の数々はその言葉の意味以上にダンサー達の感覚に届くもので、それを受けたダンサー達は自分達が思っている、予測している以上の表現を時として可能にします。
そんな不思議な力を持った振付家であると感じています。


質問2)中弥さんはご自身でも東京シティ・バレエ団でいくつもの作品の振付・演出をされています。近年だと2019年の作品『Synapse』が記憶に新しいです。
パトリック氏の振付を体験して、魅力的だなと感じた要素があれば、教えてください。

先ほどもお話したパトリックの不思議な力を、2年前に初めてクリエーションが開始した際、私はダンサー兼バレエマスターとして感じていました。
創作をする際に自身の計算された構図を元に振付をするという振付家もいますが、彼はそれとはまた違った方法で、目の前でダンサーのエネルギーを感じ、音楽を感じ、その瞬間に彼の中で紡ぎ出されたステップが作品の表現として生まれていく。そういう現場を見て、アーティスティックな表現者の持つオーラというのは、周りを引き込む力や奇跡を起こす力を持っている。それが彼の魅力の一つだと強く感じました。

質問3)こうした創作バレエ作品では表現される世界観に大きなテーマがあると思います。中弥さんからみて『WIND GAMES』とはどういったものと捉えられたでしょうか?
印象をお聞かせください。

この作品のテーマとして大きく捉えられるのは、『鷹が鷹匠の腕から空高く飛び立ち、その上空で風を感じ遊び、俯瞰した大地を眺めている』というものだと彼から聞きました。
さらに彼からは、それぞれのステップにダンサー一人一人の色を付けて表現してほしい。
また歌舞伎や桜などの日本の美が好きなパトリックは、日本の美しい歴史が日本人のDNAには備わっている、それを表現してほしいとも聞いています。

【テーマ2】「WIND GAMES」でダンサーが表現していくもの

質問1)1月に入って舞台「WIND GAMES」が日に日に形作られている段階だと思います。他の舞台と比べて稽古場の中での雰囲気はどのような感じでしょうか?
バレエマスターとしての舞台創りの観点からの印象をお聞かせください。

今回は残念ながらコロナ禍によりリモートでのリハーサルとなり、私が第一に重きをおいたのは、ダンサーのエネルギーを常に高水準で保つこと。振付家というのはダンサーにとって絶対的なリーダーで、そのリーダーに導かれダンサーが思う存分表現が出来ると思っています。パトリックとのリハーサルがリモートにより満足に行えない状況で、今回はそのリーダーとしての役割をバレエマスターが担う、というのが今回他の舞台と比べて大きく違うポイントになりました。そのお陰で私もたくさんの勉強と経験が出来たことはコロナ禍においても大きな収穫になりました。

質問2)チャイコフスキーのバレエ作品というと世界三大バレエ「白鳥の湖」「くるみ割り人形」「眠れる森の美女」が想起されます。
今回はその作品とは違い、バレエ音楽としてチャイコフスキーが作曲したものではないヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35が使われています。踊り手側からみた表現方法に
違いが出るものでしょうか?

バレエ用に作曲のされた音楽は、ダンサーの呼吸・動きや場面の転換などが計算された楽譜になっていることがほとんどです。今回のヴァイオリン協奏曲はそれとは違う楽譜の構成になっています。さらに今回はスペシャルゲストに三浦さんのヴァイオリンソロが入ります。一般的にバレエ用の音楽ではソリストの演奏も踊りに合わせることが多いですが、今回は三浦さんの素晴らしい演奏にダンサーが呼応する様に踊る、といういつもとは違う緊張感と楽しみが待っていて、私としてはこんな貴重な経験はとても羨ましく思っています。笑

【テーマ3】観客の皆さまに楽しん頂きたい、抱いて頂きたい期待感について

質問1)舞台『WIND GAMES』を観る観客の皆さんに何かメッセージをください。

偉大なるチャイコフスキーの音楽と素晴らしい演奏、類い稀な振付家の魔法、そしてTCBダンサーズのエネルギッシュで爽快な踊り、どれをとっても必ずご満足いただけるものとなっています。
ぜひとも全ての合わさったその瞬間の力を肌で感じて、興奮していただければ幸いです。

バレエマスター
中弥智博
Toshihiro Nakaya

<PROFILE>

12歳よりアートバレエ難波津にてバレエを始める。2000年より夏山周久氏に師事。01年米国Walnuthill Schoolへ留学。09年松岡伶子バレエ団入団。『ジゼル』アルブレヒト、『レ・シルフィード』詩人、『ロミオとジュリエット』マキューシオほか多数出演。同団アトリエ公演にて、13年『sinfonia eroica』、14年『syNapse』、15年『Vivace』『Blind sense』など自身の振付作品を発表。16年東京シティ・バレエ団入団。『白鳥の湖』パ・ド・トロワへの抜擢に続き、『くるみ割り人形』コクリューシュ王子で初主演を飾る。17年『Octet』(ウヴェ・ショルツ振付/日本初演)ソリスト、『コッペリア』フランツで主演し、「シティ・バレエ・サロン」にて振付作品『numero5』を発表。18年、オーケストラwithバレエ『ペール・ギュント』の振付に抜擢され好評を得る。