ガブリエレ・ブランドステッターによる紹介、ヴォルクマル・ドレーガーによる作品分析、アーティストへのインタビューを含む、ウヴェ・ショルツの作品に関する初の出版本。
著:Nadja Kadel・Kati Burchart
They were not very modern, but linked with the classical form of ballet. He was – similar to Balanchine – very, very musical. He could have also become a singer or a violinist. Highly musical.
彼の作品は現代的というより、バレエの古典的な形式とリンクしていました。彼は、バランシンのようにとても、とても音楽的でした。歌手やバイオリニストになることもできた。音楽性が高かったですね。
Interview with Andre Presser on "The Creation"
アンドレ・プレッサー "天地創造 "インタビューより
The love for dance that he created around him was unique. I believe most dancers in the company felt that. Some of his rehearsals of The Creation, for ex-ample, were much more than a rehearsal — it was like there was a sacred atmosphere in the studio, full of electricity, and everybody was giving 200 percent.
彼の周りで生まれたダンスへの愛情は他にはないものでした。それをカンパニーのほとんどのダンサーが感じていたのではないでしょうか。例えば『天地創造』のリハーサル中では、リハーサルというよりも、スタジオには神聖な雰囲気が漂っていて、電流に満たされ、皆が200%の力を出し切っているような感じがしました。
Christine Jaroszewski on "Octet"
クリスティン・ジャロシェフスキが語る”Octet”
『天地創造』Hob.XXI-2は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが作曲したオラトリオ(聖譚曲)であり、『四季』とともにハイドンの最も有名なオラトリオのひとつと言われています。
『四季」が、ドイツの農民生活を描いているのに対し,『天地創造』は,宗教音楽やオペラ・セリア的な音楽で、全体は3つのパートに分けられています。
第1部では『天地創造』の第1日~第4日までを、第2部では第5日、第6日が語られ、第3部では第2部で創造された人間の男女、アダムとイヴの姿が語られています。
この『ウヴェ・ショルツ・セレクションⅡ』では、この第3部:第32曲 珠玉の二重唱 「優しき妻よ、お前の傍らにあれば」にのせて、アダムとイヴ、2人の限りない愛のシーンをパ・ド・ドゥでお届けします。
息の長い優美なメロディの後、アダム、イヴの順に歌い、二人が声を合わせて甘く歌いあげます。やがて、テンポがアレグロに変わり、オペラのアリアを聞くような楽しげな雰囲気で終わります。
In this part, the living beings are created by God and represented in the dance with birdlike poses, but the people are also the highpoint of the choreographic construction. The words Uriel sings are reflected in the sheer joie de vivre of a dancer in a fast solo full of pirouettes, turns and balances. A sung tercet becomes a delicately thoughtful trio between parents and child; the parents fashion their devoted love in front of a dan-delion clock, and, embracing one another in a lying Position, are then lifted and carried off stage by eight men. After a group picture showing the people tightly embraced in harmony, ※we see Adam and Eve in love, to the duet “Meek wife! At your side”, in front of an image projection symbolizing their union; their final scene points toward eternity. The final chorus once more celebrates God’s work, with all the dancers forming a swaying line and the circle, the men now bare-chested.
このパートでは、生物は神によって創造され、鳥のようなポーズの踊りの中で表現されていますが、人間もまた、振り付け構成の見どころとなっています。ウリエルの歌う言葉は、ピルエット、ターン、バランスを駆使したスピード感あふれるソロを踊る、生きる喜びを感じ踊るダンサーに反映されています。歌われたテルケットは、親子の間の繊細で思慮深いトリオによって描かれ、両親は、たんぽぽの綿毛の前で献身的な愛を表現し、横になって抱き合います。その後、8人の男たちによって持ち上げられ、ステージから運び出されます。和やかに抱き合う人々が集う場面の後、※「優しき妻よ!あなたの傍らにあれば」のデュエットに合わせて、アダムとイヴが投影され、最後には永遠の愛を告げる2人の姿が映し出されます。2人の愛を象徴する投影像の前で、最後は永遠を告げます。最後のコーラスは、再び神のなせる業を讃えるもので、すべてのダンサーたちが一直線に揺れ、輪になる中、男たちは上裸で表現しています。
※『天地創造』~パ・ド・ドゥは、ウヴェ・ショルツが振付した第3部パートのこのシーンを日本初演でお届けします。
中弥智博 Toshihiro Nakaya
この作品を初めて観た時、私は衝撃を受けました。
アダムとイブの人間の始まりを描いた作品であることは知っていましたが、こんなに音楽と踊りと表現が一致するものがあるなんて、そしてこんなに心地良いものだなんて。人類の始まりとして、二人の愛が芽生える瞬間の恥じらいや感動といった表現が重要だと、ジョヴァンニ先生は美しい言葉でダンサーへ伝えています。
本編では2時間ほどある大作の中の一部として踊られますが、この数分間だけでも様々な情景が浮かんで来る、これほどまでに美しくエネルギーに溢れたパ・ド・ドゥは古典作品の中でも数少ないのではないかと、舞台での踊りに思いを馳せながらリハーサル指導をしています。
また、バレエマスターとしてジョヴァンニ先生の指導を傍で見て感じることは、ダンサーが自身の限界を超えて羽ばたきだすような瞬間には、指導者であっても感動を覚えるということです。
そんな素敵なリハーサルの時間をみんなと共に過ごせていることに、改めて感謝を致します。そしてこの素晴らしい体験を観客の皆様と共有出来ることを、楽しみにしております。
音楽:J.ハイドン オラトリオ「天地創造」Hob.XXI-2
衣裳製作:Costumiere
初演:チューリッヒ・バレエ団(1985年)
バレエミストレス:加藤浩子
バレエマスター:中弥智博
天地創造 | 佐合萌香 キム・セジョン |
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