Without Words

©鹿摩 隆司

INTERVIEW
監督補佐
小林 洋壱
Yoichi Kobayashi

PROFILE

<PROFILE>
長野バレエ団にて倉島照代に師事。1995年イングリッシュナショナルバレエスクールへ留学。2001年東京シティ・バレエ団入団。05年「ジゼル」にて初主演。以降「白鳥の湖」「コッペリア」「くるみ割り人形」に主演のほか、「カルメン」ホセ、「ロミオとジュリエット」パリスなど、重要な役を踊る。07年Dancing for the AIDS Orphansにて「ドラキュラ」(振付:リン・チャールズ)、「コンチェルト・バロッコ」(振付:G・バランシン)に出演。08年バレエ団公演にて振付家としてもデビュー。ラフィネ・バレエコンサートにて「After the Rain」(2008年)「Without Words」(2009年)「HOTARU」(2010年)「Circle of Life」(2012年)を発表。近年では「くるみ割り人形」などの古典作品の演出等も手掛け、「シティ・バレエ・サロン」シリーズにて公演監督をはじめ自身の創作作品を多数発表している。公益財団法人東京シティ・バレエ団理事。東京シティ・バレエ団監督補佐。

『白鳥の湖』ジークフリード王子
©鹿摩 隆司

『Without Words』というタイトルに込めた想いをお聞かせ下さい。また、この『Without Words』に至るまでモチーフになったもの、着想を得たものがあれば教えて下さい。

『Without Words』は、谷川俊太郎の詩「からだの中に」という詩から着想を得て作品にしたものです。

「からだの中に」
からだの中に 深いさけびがあり 口はそれ故につぐまれる
からだの中に 明けることのない夜があり 眼はそれ故に身はられる
~ 略 ~
からだの中に ああからだの中に 私をあなたにむすぶ血と肉があり
人はそれ故にこんなにも ひとりひとりだ

出典:谷川俊太郎「からだの中に」

という詩ですが、自分が小学生の頃、何かの授業で触れたもので、それからずっと頭の中になんとなく残っていました。
それから30年程経ち、バレエ団の「ラフィネ・バレエコンサート」で志賀育恵とチョ・ミンヨンで初演したのが、この『Without Words』なのですが、最初からこの詩が浮かんでいたわけではありませんでした。テーマもなくマーラーのアダージェットを流し、動きをつけ始め、しばらくした時になんとなく頭の中に浮かんできて、作品のイメージにピタッとはまった言葉でした。

何度も再演されてきた演目ということですが、回数を重ねることで「厚み」や「魅力」を増していく要素があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか?

©鹿摩 隆司

この作品は、ダンサーに委ねるところが大きくて、特に「からだの中に」のイメージを伝えて踊ってもらうわけではありません。その時に踊るダンサーによって毎回初演になる感じがしています。

自由に曲と空間を感じて踊ってもらうというか……。観る方にも自由な感じ方をしていただけたらと思っています。

今回のトリプル・ビル公演では、アンサンブルを加えた編成で臨まれるとのことですが、何かそれまでと変わる部分はあるのでしょうか?

©鹿摩 隆司

アンサンブルを付けたバージョンは、2016年の「釜山ダンスフェスティバル」で上演するために創りました。

4人はいわゆるコロスのような役割をイメージしていますが、当時、自分の中でもこのアンサンブルの位置付けには迷いがありました。今回の再演によって見えてくるものがあるか、自分自身楽しみでもあります。

※古代ギリシャ劇の合唱隊。ユニゾンによる歌と舞踏が一体となったもので,劇中で群衆の役を演じ,筋の説明をするなど進行を助けた。ギリシア語で〈踊りの場〉を意味する語。

踊り手であるダンサーが変わることでも、また違った魅力が出てくるのではないかと思います。振付・演出で力を入れている点に関して教えて下さい。

©鹿摩 隆司

先ほどの答えと重なる部分もありますが、踊ってくれるダンサーに委ねる部分が大きく、ダンサーから見えてくるものを感じて動きやニュアンスを変えていきたいと思っています。

今回デュエットは植田穂乃香さんと石黒善大くんに踊ってもらいますが、二人のからだの中に何があるか、一緒に感じ、創っていきたいと思います。