MUSIC音楽

INTERVIEW
チャイコフスキー三大バレエ音楽「眠れる森の美女」とは
指揮
熊倉 優
Masaru Kumakura

<PROFILE>

1992年東京生まれ。作曲を16歳より、指揮を大学入学時より始める。
桐朋学園大学卒業及び同研究科修了。
指揮を梅田俊明氏、下野竜也氏に師事。
第18回東京国際音楽コンクール<指揮>にて第3位受賞。第26回京都フランス音楽アカデミーにて最優秀賞(第1位)受賞。第12回ドナウ国際指揮者コンクールで第2位受賞。
2016年より2019年までNHK交響楽団・首席指揮者パーヴォ・ヤルヴィ氏及び、同団アシスタントとして定期公演等に携わる。
2017年には、Charles Olivieri-Munroe氏のマスタークラスに参加し、Karlovy Vary Symphony Orchestraを指揮。またEuropean Music Academy 2017では、North Czech Philharmonicとチェコのスメタナホールにて共演。
これまでに広島交響楽団、NHK交響楽団、九州交響楽団、群馬交響楽団、東京交響楽団、兵庫芸術文化センター管弦楽団、東京都交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、札幌交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、大阪交響楽団等と共演。
その他にも、日生劇場ファミリーフェスティバル2019や洗足学園大学第4回バレエコース本公演にて、眠りの森の美女を谷桃子バレエ団と共演。(管弦楽:洗足学園ニューフィルハーモニック管弦楽団)またファミリーオペラコンサートにおける「魔笛」の指揮や、東京混声合唱団との共演など、様々な分野への活動を広げている。
洗足学園音楽大学非常勤講師。

当団では、初めて熊倉さんにインタビューをさせて頂きます。
最初に、東京シティ・バレエ団『眠れる森の美女」全幕で指揮をされることになったきっかけを教えてください。

2018年12月末に洗足学園大学で行われたバレエコース公演の指揮をさせて頂きました。この公演が自分にとって人生で初めてバレエを振らせて頂く瞬間だったのですが、その際の演目が「眠りの森の美女」であり、終演後に東京シティ・バレエ団の芸術監督である安達悦子先生とお話しさせて頂き、今回東京シティ・バレエ団の皆さんとご一緒させて頂けることになりました。

「眠れる森の美女」は、チャイコフスキー三大バレエ音楽の一つとして有名です。
それまでのバレエ音楽と違って、史上初めてシンフォニー形式のバレエ音楽として完成された「眠れる森の美女」ですが、熊倉さんからみて、その魅力を挙げるとすればどういったところがあるでしょうか?

「眠れる森の美女」の音楽の魅力、挙げればキリがないでしょうが、敢えて全曲を通して一つだけ挙げるなら、全体の音楽の構成でしょうか。
序奏で提示されるカラボスのテーマとリラの精のテーマ、言い換えれば善悪の2つのテーマが、全曲の中でも中心となり何度も現れますが、その際、それらのテーマは毎回チャイコフスキーの素晴らしい、そしてそれぞれ違ったオーケストレーションで提示され、物語がどう動いていっているのかを描き出します。
それらを中心に、その周りを様々なキャラクターの音楽が彩ることによって、この「眠れる森の美女」の音楽は、キャラクターの多彩性だけでなく、物語の中心となる部分を音楽の構成で伝えているのではないでしょうか。
そこが全曲を通した時に一つの音楽としてとても魅力的に感じます。

熊倉さんが、普段指揮をされる中で力点を置いている点があれば教えてください。また、それがバレエ音楽の指揮となることで何かイマジネーションを膨らませる要素があれば、教えてください。

「共感」でしょうか。当然のことですが、オーケストラはたくさんの音楽家で成り立っており、オーケストラとしてだけでなく1人1人が音楽を持っています。そのような皆さんと指揮者、つまりは1人の音楽家として対峙した時に、一方通行のコミュニケーションではなく、音楽のやり取り、共有そして共感することで1人の音楽家だけでは見えてこない世界が見えてくると信じています。
バレエ公演の際にも、同じアーティストとして音楽がバレエを支えるだけでなく、お互いに刺激し合い、より良いものに到達できれば良いなと思っています。

演奏するシアターオーケストラトーキョーは、「2005年にバレエを中心とした“劇場”を主な活動の場として編成されたオーケストラ(脚注:シアターオーケストラトーキョーオフィシャルサイト「プロフィール」より抜粋)」ですが、こうしたバレエ専門のオーケストラで指揮をすることで、どのような魅力を出して行きたいとお考えでしょうか?オーケストラに対する期待値やご自身の意気込みなど、お聞かせください。

バレエ公演を中心に活動されているシアターオーケストラトーキョーの皆さんとご一緒出来ることはとても嬉しく思います。
バレエを熟知されている皆さんから音を通じて色々なことを教えて頂くと同時に、自分はまだまだ経験が豊富ではないですが、自分なりに色々皆さんにアプローチさせて頂いた結果、どのような「眠りの森の美女」の世界が生まれるのか楽しみにしております。

最後に、東京シティ・バレエ団「眠れる森の美女」は、公演時間の長さ、規模感などの理由から、約40年ぶりの再演となる全幕公演として、煌びやかな大作舞台になります。指揮者のお立場から、今回の舞台を楽しみにしていらっしゃる観客の皆さまに向けて、何かメッセージを頂いてもよろしいでしょうか?

この公演に携わらせて頂く一員として、この素晴らしい作品を皆さまにお届け出来るように、精一杯努めますので、この40年ぶりの再演となる全幕公演、この機会を逃さず皆さま是非ホールに観にいらっしゃって下さい。直接目にする、耳にするからこそ感じられる世界があると信じています。皆様と会場でお会いできることを楽しみにしております。

Theater Orchestra Tokyo

©Jin Kimoto

2005年バレエを中心とした“劇場”を主な活動の場として結成。06年よりKバレエ カンパニーの全公演の演奏を務めている。07年より音楽監督(現 名誉音楽監督)にバレエ音楽に最も造詣の深い福田一雄を迎え、劇場音楽への深い理解と意欲的な取り組みが注目を集めている。ウィーン国立バレエ、パリ・オペラ座バレエ団、サンクトペテルブルグバレエなどの来日公演をはじめ、国内外のバレエ団公演のほか、三枝成彰『悲嘆』『Jr.バタフライ』、「モーツァルト交響曲全45曲演奏会」、テレビ朝日「世界まるごとクラシック」、「青島広志のバレエ音楽ってステキ!」などオペラ公演やコンサート、室内楽等で広く演奏活動を行っている。
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