STAGE ART舞台美術・大道具

INTERVIEW
舞台美術
江頭 良年
Yoshitoshi Egashira
2012年プログラムインタビューより

<PROFILE>

山口県生まれ。学生時代よりイラストレーターとしての活動を始め、舞台美術を前田哲彦に師事。24歳で舞踊公演「日々の泡」で舞台美術家デビュー。その後、コンサート美術・演劇・舞踊公演で多くの作品を手がける。日本舞台美術家協会第36回伊藤熹朔賞奨励賞受賞。

舞台美術は「背景」ではなく心理描写

この作品の初演の折「新しいロミオとジュリエットの形を作ろう」と、演出の中島さんに誘われました。可動式の舞台美術を使った場面転換を多用するアイデアを聞いて、コンセプトを話し合いながら2~3ヶ月かけてプランを練り上げました。初めて美術のデッサンを見た中島さんには「自分のイメージがいい意味で覆された」と言われたのを覚えています。
舞台美術は、単なる背景ではないんです。例えば、第1幕のバルコニーのシーンは、先端がうすく尖っていて、形によって心理的な部分も表現しています。メインの素材は、小さな穴がたくさん開いたパンチングメタルなので、初演から2年経って、さびが出たら、またその質感もおもしろいものになると思います。

以前、舞台美術を担当したフラメンコの「曾根崎心中」のスペイン公演では、現地で「なぜお金のために死ぬのか」とよく聞かれました。同じ心中でも「ロミオとジュリエット」では二人の死には、純粋な思いだけしかない。誰もが望む究極の生きざまなのかも知れません。その美の極みのラストシーンは、あふれる光の世界にしたい、という中島さんの意向にそって考えたものです。演出家の中島さんのアイデアには色々と刺激され、新しい引き出しが増えるようで楽しく仕事をしています。(談)